中東での出稼ぎCAの備忘録✈

自分の常識は世界の常識ではなかったということに気づかされ、常識を破られる日々

ヤクザ集会の地、カサブランカ

今回は「土曜ワイド劇場:CAは見た!」シリーズでお送りしたいと思います。そう私見てしまったのです。Unbelievableな光景を…。

みなさん、カサブランカと聞くと…?たいていの人がかの有名なアカデミー賞を受賞したラブロマンス映画を思い浮かべるのではないでしょうか。
しっしかし、そんなロマンティックなイメージとは裏腹に、私の3年間のクルーライフ上、衝撃的ワーストフライトがモロッコの都市、カサブランカでございます。

カサブランカはすんごいしんどいフライトとしてとても有名で、噂はかねがね聞いていたのですが、入社後一年記念日のフライトとしてアサインされ、このフライトを経てまたさらに成長した(正しくは強くなった…)といっても過言ではありません。


今でも忘れられないボーディングタイム。出発ぎりぎりになっても全然来ない10人程のドバイからの大家族。やっと来たよ…と思ったらいきなりシャウト!!!

「Where is the bed for our infants!???」赤ちゃん用のベッドはどこだおりゃぁぁぁとヤクザ並みの勢いで、ただ傍に立っていたなにも罪のない私にシャウト。はぁやれやれ。とりあえず遅れてきたんだから少しは反省の色を見せてくれ…(彼らにこんなこと思っても全く意味のないことはわかってます笑)
ベッドは離陸後に設置しますから…となだめると4台分ほしいと。その家族に提供できるベッドは2台。他の2台は他のお客さんの赤ちゃん用。そしたらまたシャウトッッ!チケット代返せとか、こんな飛行機乗らないとか、スーパーバイザーとグランドスタッフ呼んで来い!!とかもうキレッキレ。
彼らのクレーム対応で1時間弱出発時間が遅れると、今度はまた別のお客さんが「いつまで待たせるんだ、こんちくしょーーこんな飛行機もう乗らない!!ドアを開けろーーーー!!」と駄々をこねだし、無茶なことを言ってくる。そんなんでいろんなお客さんが立ちだして、おりゃぁぁぁみたいな(アラビア語なのでわからず笑)言い合いを始めて機内はパニック。そう…中東全域(主にクエート、パレスチナ、ドバイetc)からヤクザが集結してしまったのです。

 

なーんとか事態は収まり、かなりの遅延でやっと離陸。しかし、ふぁーと息つく暇なんかなく、ノンストップコールベル&要求の嵐。しかも頼むのではなく超威圧的な要求。かわいい顔した子供まで指をぱちんぱちん鳴らして「エクスキューズミーー!!!!」とすんごい上からメイド扱い。

クルー全員、機内を行ったり来たり全力疾走。こんなに肉体的にも精神的にも辛いなんて…心半分折れかかり、仕事本気で間違えたと絶望していた時に、

「あなた、日本人?大丈夫??」と優しい声が。そうそのフライトには中東のヤクザとは別に日本人の団体グループのお客さんも乗っていたんです。ヤクザの対応に追われ、まったく日本人のお客さんに気をかけてる時間もなく、もう気が付いたら着陸に近い時間に。日本人ということを伝えると、1組の老夫婦が

「あなた、海外の日本人がいないところで頑張ってるわね、機内を本当に忙しく走り回って…応援しているわ、これほんの気持ち。」

と、即席で作ったと思われる折り鶴が…。たぶんこのお客さんたちは日本線では絶対に見ることのない機内の状況に愕然としたのだと思います。でも、この優しい言葉と気遣いがすごく嬉しくて…自然と涙がほろり。

しかしそんな感傷に浸ってる間もなく、カサブランカに着陸!機体が止まるまで着席していなきゃいけないのに、そんなの彼らには関係ねぇ。即行起立!!涙
もうこっちも我慢できずヤクザ口調で「Sit Dooooown!!!!!すわれぇぇぇぇぇ」とコントロールをしに行き着席させて、また自分のクルーシートにやっと戻ると、目の前に座っていたモロッコ人のお客さんが、

「本当にハードワークお疲れ様だったね。大変だったのがよくわかったよ…。ところで君は日本出身だろう?なぜ日本で仕事を探さないのかい??」

と、ついにお客さんに転職を進められる始末…返す言葉も元気もありませんでした苦笑。

 

まぁこんな史上最凶のフライトをなんとか乗り越えたので、きっと帰りの便は少しはマシだろうと、ここにいる全員が共通して思いますよね?っね?

 

帰りは超超超酔っ払いのモロッコ人女性が繰り広げる数々のドラマの対応に追われることになるのです…とほほほほほほ。

フライトのしょっぱなからワインをがぶ飲みし、ついにはギャレーにまで来てありとあらゆるお酒を頼みだしたんです。私達クルーはお客さんのアルコールの摂取量もモニターしなくてはならないので、みんなで彼女に提供するお酒を減らしてさらに時間を遅らせようということになりました。(トランジットでだいぶ酔っぱらっていると、次の国に行くフライトに搭乗できないことだってあるんです)

最終的にお酒を提供できないことを告げると、ガチギレ。私は酔っぱらってないし、まだまだ飲めるーーー!!!と典型的な酔っ払いが言うセリフを放ったのちに、なんと周りに座っていた男性人たちにキスをし始めたんです!そして彼らからお酒を譲ってもらっていたんです(ちなみにここはクラブでもバーでもなくまぎれもなく機内です笑)

 

そして私は見てしまったんです…。彼女が一人の男性を連れて、トイレに入っていくところを…。オーマイゴッド!!OMG!!!

私は第一発見者だったので、トイレを開けなくてはならず、とんとんとんとんドアを叩いたけれど、返事無し。しょうがないのでチーフパーサーと共に、強行突破で鍵を開けると…

酔っぱらってぶっ倒れている二人がwwwwww

その後水を飲ませて看病。お願いだから、機内でもうお酒をこんなに飲まないで…機内は通常より4倍酔っぱらいやすいの…だから過信は禁物!!!!彼らにこの想いが届いたことを願うばかり…

 

私もうこのフライト終えて、当分なにも恐れるものはありませんでした。でももしもう一度カサブランカ線をやることになったら…怖くて震えてトラウマが蘇えるでしょう笑。

ちなみにフライトは鬼畜ですが、カサブランカの都市自体は普通に良いところでした。でもこんな苦しい思いをしてまで来るところではないかな~~というのが本音です笑。